肺高血圧症の診断|レバチオ
肺高血圧症の診断
肺高血圧症の診察(問診、視診、聴診など)
肺高血圧症の診断は、症状・身体所見からの診断、スクリーニング検査、確定診断のステップで行われます。
1. 問診1)
特発性肺動脈性肺高血圧症の好発年齢は男性では50歳前後、女性では60歳前後までであり、高齢の発症では、二次性肺高血圧症の存在を念頭におく。
特発性肺動脈性肺高血圧症に特異的な症状はないが、失神の有無は必ず聴取する。失神の存在は進行が速い、あるいは重症であることを示す。
既往歴・家族歴の詳細な聴取により、二次性肺高血圧症であることがしばしば判明する。膠原病、肝疾患、HIV感染、肺疾患などについては必ず問診する。
2. 症状2)
- 〈自覚症状〉
- 労作時呼吸困難、息切れ、易疲労感、動悸、胸痛、失神、咳嗽、腹部膨満感などがみられる。いずれも軽度の肺高血圧では出現しにくく、
症状が出現したときには、既に高度の肺高血圧症が認められることが多い。
高度肺高血圧症には労作時の突然死の危険性がある。 - 〈身体所見〉
- 右室肥大に伴う傍胸骨拍動、Ⅱ音肺動脈成分の亢進、三尖弁閉鎖不全症に伴う胸骨左縁下部での汎収縮期雑音(吸気時に増強しRivero-Carvallo徴候と呼ばれる)、肺動脈弁閉鎖不全症に伴う第Ⅱ肋間胸骨左縁での拡張早期雑音(Graham Steel雑音)、収縮期早期のclick音、右室由来のⅢ音、Ⅳ音を聴取することがある。さらに進行例では、頸静脈怒張、肝腫大、下腿浮腫、腹水などがみられる。
3. 肺高血圧症の危険因子3)
肺高血圧症の危険因子として食欲抑制薬(食欲減退薬)の服用、コカインやアンフェタミンなどの摂取、門脈圧亢進症の存在、HIV感染などが知られている。

- 1)佐藤 徹:“Ⅱ肺高血圧症 診断法” 新 目でみる循環器病シリーズ16. 肺循環障害 第1版 メディカルビュー社:59, 2007
- 2)日本循環器学会. 循環器病ガイドラインシリーズ2017年版:肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_fukuda_h.pdf(2020年8月閲覧) - 3)笠原 靖紀ほか:内科95(6):1045, 2005
肺高血圧症のスクリーニング検査
肺高血圧の存在が疑われた場合は、スクリーニング検査では心電図、胸部X線、心エコーなどで肺高血圧の有無を検査します。
特に重要なのが心エコーで、肺高血圧症の非侵襲的検査方法として有用です。
- 主なスクリーニング検査
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日本循環器学会. 循環器病ガイドラインシリーズ2017年版:肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2017_fukuda_h.pdf(2020年8月閲覧)
肺高血圧症の確定診断
精密検査で肺高血圧症をきたした原因を調べます。右心カテーテル検査は肺高血圧症の確定診断に必須の検査です。
- 主な精密検査
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Badesch, D. B. et al.:J Am Coll Cardiol 54(1 Suppl):S55, 2009