Point
- 高血圧症患者さんの中で、MR拮抗薬(MRA)の追加投与により血圧コントロールが改善する病態として「MR関連高血圧」があります。この高血圧は、血漿アルドステロン濃度が高値を示すタイプと、正常範囲のタイプに分けられます。
- 血漿アルドステロン濃度が正常の肥満、糖尿病、CKDなどでは、第一選択薬で十分な降圧効果が得られない場合、MR関連高血圧を疑ってMRAを追加投与することは有用な選択肢の一つです。
MR関連高血圧とどう向かい合うか?
監修
大分大学医学部 内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座 教授
柴田 洋孝 先生
アルドステロンは、アンジオテンシンⅡ(AngⅡ)の作用により分泌されます。アルドステロンは、ミネラルコルチコイド受容体(MR)に作用してNa再吸収やK排泄により体液量減少時の恒常性維持に働く一方で、心血管系に作用して炎症や線維化を来すことが知られています。
従来用いられてきた「アルドステロン拮抗薬」は、アルドステロン活性を主に抑制する薬剤をイメージされますが、実際にはアルドステロンだけではなくコルチゾールのMRへの結合も阻害することから、今回発表された「高血圧治療ガイドライン
2019」(JSH
2019)では「MR拮抗薬(MRA)」と名称変更されました。MRAのわが国における主な適応は、第一選択薬の増量や服薬法変更でも降圧効果が十分に得られない場合の併用薬、心不全、原発性アルドステロン症となっています。
わが国における高血圧症有病者数は約4,300万人ですが、降圧薬による治療中にもかかわらずコントロール不良例は約1,250万人に上ります
1)
。コントロール不良の高血圧症(治療抵抗性高血圧)にMRAを投与すると血圧コントロールが改善するケースがあり、われわれはこのような病態を「MR関連高血圧(MR-associated
hypertension)および臓器障害」と提唱しています。
MR関連高血圧のうち、血漿アルドステロン濃度が高値を示すものの一つに原発性アルドステロン症があります(表1)
2)
。原発性アルドステロン症は、わが国の後ろ向き研究JPAS
studyの結果などから、心血管疾患や脳卒中の頻度が高いことが知られています
3)
。また原発性アルドステロン症は、本態性高血圧と比較しても心血管疾患のリスクが高く、高リスク因子として低K血症、血中アルドステロン濃度>125pg/mLが明らかにされています
4)
。
2019年に発表されたJSH 2019では、原発性アルドステロン症の診療の手順に関して10項目が改訂されました(図1)
5)
。
原発性アルドステロン症のスクリーニングでは、対象に睡眠時無呼吸症候群を伴う高血圧が追加されています。また、従来のARR/PRA比に加えて、活性型レニン濃度(ARC)を用いたアルドステロン/レニン比(PAC/ARC)>40~50もスクリーニングで用いることになりました。採血は早朝~午前中の随時で行うようにして、陰性の場合には早朝、空腹、安静時臥床後に再検査を実施します。また採血は休薬、薬剤の変更をせずに実施するようにします。陰性の場合には、Ca拮抗薬などに変更をして、2週間後に再検査を実施するという流れになっています。
治療については、スクリーニング以降の精査を患者が希望しない場合には、MRA投与を検討することになります。MRAを第一選択薬とし、MRAで降圧効果が不十分な場合には、Ca拮抗薬、利尿薬、ARB、ACE阻害薬を併用します。なおMRA投与にあたっては、血圧、血清K濃度、血漿レニン活性または濃度を目安に用量調節を行う必要があります。実際の治療方針は、疾患の特徴、医療スタッフの特徴、患者の希望を参考に決めることが重要となります。
MR関連高血圧には、前にご紹介しました原発性アルドステロン症に代表される血漿アルドステロン濃度高値のものに加え、血漿アルドステロン濃度が正常なタイプもあります。具体的には、肥満、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)を合併した高血圧症などになります(表2)
2)
。
これらの高血圧症患者では、降圧薬を3種類以上投与しても血圧コントロールが困難であることが多くなっています。そして、これらの患者さんにMRAを追加投与することより、多くの場合で血圧コントロールが可能になることが知られています。このことからも、肥満、糖尿病、CKDを合併した高血圧症では、MRの活性化が関与していることが示唆されます。
高血圧に対する日常診療では、通常、RA系抑制薬やCa拮抗薬が第一選択薬として用いられています。しかし、これらの薬剤で十分な血圧コントロールが得られない場合には、MR関連高血圧という病態を疑い、MRAを追加投与することは厳格な血圧コントロールのための選択肢の一つになると考えます。
<文献>
1) 2016年 厚生労働省 国民健康・栄養調査
2) Shibata H et al: Am J Hypertens 25: 514, 2012
3) Ohno Y et al: Hypertension 71: 530-537, 2018
4) Satoh M et al: Hypertens Res 47: 817, 2019
5) 日本高血圧学会編: 高血圧治療ガイドライン 2019
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