食塩とミネラルコルチコイドから病態を考える

食塩とミネラルコルチコイドから病態を考える

監修 香川大学医学部 薬理学 教授 西山 成 先生

Point

  • 従来、体内の食塩NaClの濃度は一定に維持されると考えられてきましたが、最近の研究から、体の一部に高濃度で蓄積することが明らかにされています。
  • 食塩過剰の状態はアルドステロン非依存性にMRを活性化させることにより、食塩感受性高血圧や臓器障害を引き起こすことがわかってきました。
  • 食塩摂取量が多い現代において多くみられる食塩感受性高血圧に対しては、適切な減塩指導に加えてMRA投与が重要だと考えられます。

新しい塩の概念

旧石器時代と比較して、現代はエネルギー摂取量はほとんど変化がないものの、食塩と炭水化物の摂取量が極めて多くなってきていると言われています。体内では、食塩NaClの濃度が0.9%になるように一定に維持されています。この0.9%の濃度の食塩水は、生理食塩液と呼ばれています。

塩分と水分の摂取により体液量は増加しますが、尿から塩分と水分を排出することで体重は元に戻り、結果として体内のNa + 濃度は一定に維持されるとされてきました。しかしながら、最近のさまざまな検討から、体内の細胞外液中Na + 濃度は一定ではなく、塩が体の一部に高濃度で蓄積することが分かってきました(図1)。

図1

KoppらはMRIを用いて人体の手足の組織中に含まれるNa + 量を測定しました。その結果、高齢高血圧患者では、皮膚や筋肉にNa + が蓄積することが認められました 1) 。この結果から、Na + は高濃度で人体に蓄積することが示されましたが、現時点ではNa + が蓄積するメカニズムは明らかにされていません。一方、原発性アルドステロン症患者の検討では、足の組織にNa + 含有量が多いことがわかりました 2) 。そして、副腎摘出術後、血中のアルドステロン値は正常化して血圧も低下しましたが、これらの変化は足の組織のNa + 含有量の低下を伴っていました。

これらの成績から、ミネラルコルチコイド(MR)の活性化は、人体におけるNa + 蓄積に重要な役割を果たしている可能性があると考えられます。

新しい塩とMRの概念 ―食塩過剰病態におけるMRの活性化―

食塩過剰の状態では、レニン分泌の低下を伴って、RAA系の活性は低下するとされています。しかしその一方で、食塩過剰はアルドステロン非依存性にMRを活性化させることにより、食塩感受性高血圧とその合併症である臓器障害を引き起こすと考えられています(図2)。

監修:香川大学医学部 薬理学 西山 成 先生

図2

MRの活性化メカニズムについては、古典的なRAA経路による活性化に加え、肥満、高血糖・炎症、Naなどの生活習慣病リスクがMRを活性化させることが最近の研究から示唆されています(図3) 3)

Nishiyama A: Hypertens Res. 42(3):293, 2019をもとに作成

図3

降圧薬を複数投与しても降圧効果が十分に得られない患者に対し、MRAを追加投与することにより降圧効果が得られることがあります 4) 。このような場合、MRAが食塩過剰摂取によるMR活性化を抑制して降圧効果を発揮している可能性があります。このように、食塩過剰摂取や生活習慣病リスクは、MRが活性化することで食塩感受性高血圧を引き起こし、心血管障害・腎障害につながります。

監修:香川大学医学部 薬理学 西山 成 先生

図4

一方で心血管組織や腎臓のさまざまな細胞に発現している局所のMR活性化によっても、心血管障害・腎障害が生じるとされています(図4) 3)

以上を踏まえ、食塩摂取量が多い現代においてみられる食塩感受性高血圧に対しては、適切な減塩指導に加えMRA投与も重要だと考えます。

<文献>
1) Kopp C et al: Hypertension.61(3): 635, 2013
2) Kopp C et al: Hypertension. 59(1): 167, 2012
3) Nishiyama A: Hypertens Res. 42(3):293, 2019
4) Calhoun D A et al: J Am Soc Hypertens. 2(6): 462, 2008

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