- 心不全の病態進展にはレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系の過剰な活性化が関与しています。
- MRAは心不全の予後改善効果が認められており、「急性・慢性心不全診療ガイドライン」でもLVEFの低下した慢性心不全において、禁忌がない限り全例にMRAの投与が推奨されているものの、MRAの処方は必ずしも進んでいないという課題があります。
なぜ今MRAなのか?
MRAの重要性
なぜ今MRAなのか?
近年、ミネラルコルチコイド受容体(MR)はさまざまな生理作用を有し、高血圧、慢性腎臓病、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、動脈硬化、そして心不全の病態進展に及ぼす影響が大きいことが解明されてきました。本コンテンツでは、最新の知見に基づき、MRの多角的な生理作用とミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の心血管保護作用に基づく心不全診療について、基礎と臨床のエキスパートの先生方に解説いただきます。
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すべての循環器内科医が知っておくべき、
新たな心不全標準治療監修 東京慈恵会医科大学 内科学講座循環器内科 主任教授
吉村 道博 先生 -
監修大分大学医学部 内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座
教授 柴田 洋孝 先生- 高血圧症患者さんの中で、MR拮抗薬(MRA)の追加投与により血圧コントロールが改善する病態として「MR関連高血圧」があります。この高血圧は、血漿アルドステロン濃度が高値を示すタイプと、正常範囲のタイプに分けられます。
- 血漿アルドステロン濃度が正常の肥満、糖尿病、CKDなどでは、第一選択薬で十分な降圧効果が得られない場合、MR関連高血圧を疑ってMRAを追加投与することは有用な選択肢の一つです。
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監修 香川大学医学部 薬理学 教授
西山 成 先生- 従来、体内の食塩NaClの濃度は一定に維持されると考えられてきましたが、最近の研究から、体の一部に高濃度で蓄積することが明らかにされています。
- 食塩過剰の状態はアルドステロン非依存性にMRを活性化させることにより、食塩感受性高血圧や臓器障害を引き起こすことがわかってきました。
- 食塩摂取量が多い現代において多くみられる食塩感受性高血圧に対しては、適切な減塩指導に加えてMRA投与が重要だと考えられます。
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監修 東京慈恵会医科大学 内科学講座 循環器内科 講師
名越 智古 先生- MRの活性化は心不全の増悪を来しますが、心拍出量や交感神経の活性化が起こることでRAA系がさらに活性化するという悪循環が形成されます。
- アルドステロンは、脳や心臓などの副腎外組織においても産生されることに加え、高血糖状態でもRAA系の活性化に伴い、組織局所での産生が促進される可能性が示唆されています。
- アルドステロンには、心筋細胞の脱水を阻止する短期作用と、心肥大を促進するMR依存性長期作用の二相性作用があります。