不安症とは
不安症とは
DSM-5-TRの不安症群に分類される疾患や特定用語は、過剰な恐怖及び不安と、それに関連する行動の障害を持っています1)。不安症群には「恐怖」と「不安」という状態が存在しており、互いに重複する部分もありますが、以下の点で違いがあります。
- 恐怖:
- 葛藤や逃避の際に起こる自律神経の興奮、危険が差し迫っているという思考及び逃避行動と関連しています。
- 不安:
- 将来の危険に対処するための筋緊張及び覚醒状態、警戒行動又は回避行動と関連しています1)。
不安症群は、恐怖や不安、回避行動を引き起こす対象や状況の種類、及び関連する認知的観念によって、互いに区別されます1)。
- 分離不安症
- 場面緘黙
- 限局性恐怖症
- 社交不安症
- パニック症
- パニック発作特定用語
- 広場恐怖症
- 全般不安症
- 物質・医薬品誘発性不安症
- 他の医学的状態による不安症
- 不安症、他の特定される
- 不安症、特定不能
日本精神神経学会(日本語版用語監修),
髙橋三郎・大野 裕(監訳):
DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル.
p.207-208, 242-246,医学書院,2023より作成
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1)日本精神神経学会(日本語版用語監修),
髙橋三郎・大野 裕(監訳):
DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル.p.207,医学書院,2023
不安症の病態及びメカニズム
不安症共通の病態は、扁桃体の病的な活性化と前部帯状回(ACC)等の前頭前皮質(PFC)の機能低下と考えられています1)。
全般不安症(GAD)やパニック症(PD)を例にすると、PFC/ACCの活性が低いことがみられ、一方、扁桃体は過剰に活性化し、感情制御におけるトップダウンの制御障害につながることが示唆されています1,2)。
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塩入 俊樹: 不安症研究 10(1):10, 2018より一部改変
- 1)塩入 俊樹:不安症研究 10(1):10, 2018
- 2)Mochcovitch, M. D. et al.:J Affect Disord 167:336, 2014
精神疾患に併存する不安症
難治性うつ病(Difficult to Treat Depression:DTD)の疑いのある患者における調査では、うつ病、双極症及び抑うつ症状がありながらうつ病の診断がつかない閾値下うつ病と診断された3つの群について、他の精神疾患が併存していることが分かり、不安症の併存は各群で30%以上を占めていました(うつ病群33.3%、双極症群34.3%、閾値下うつ病群44.4%)1)。各群の罹患期間の平均も10年以上1)であり、このような患者に対しては、併存疾患も含めた包括的な評価や治療が必要とされています。
- 対象:
- 2014年10月~2018年9月に杏林大学医学部付属病院でDTD疑いで詳細な評価を受けた患者(n=122)
- 方法:
- DSM-IV-TRに基づく診断、構造化臨床面接(SCID-I)やその他の評価をもとに患者の精神疾患を調査した。患者は、SCID-Iによって3群(うつ病群[n=51]・双極症群[n=35]・閾値下うつ病群[n=36])に分けられ、人口統計学的及び臨床的特徴は、Kruskal-Wallis検定またはFisherの正確検定を使用して比較された。全ての検定で両側p値<0.05の場合に統計的有意と判断した。
- リミテーション:
- 研究対象集団が単一の施設のみで構成されていること、及びサンプルサイズが限られており、統計的検出力に課題があること、DSM-IV-TRを用いているためDTD疑いの症状の現在の傾向を完全には反映していない可能性があること、患者の負担に関する認識の違いがデータに影響を与える可能性があること、当初うつ病の治療を受けた後で双極症と診断された患者が含まれていること、本研究は横断研究のため因果関係の推測や症状の進行・治療への反応を経時的に追跡することは困難であることが挙げられる。
- 1)Murao, M. et al.:Front Psychiatry 21:1371242, 2024