他疾患との鑑別

精神疾患に併存する全般不安症(GAD)

不安症の1つであるGADも他の精神疾患と併存することが示唆されています。うつ病患者では71.7%にGADの併存が疑われ、うつ病にGADが併存するとQOLが低下すると報告されています1)。また、双極症患者でも13.3%にGADの併存があると報告されています2)
日本における調査で、精神科医のGADの認知度は高いものの、診断基準や評価尺度を用いたGADの診断頻度は少ないと示されています。医師が、GADが疑われる患者をGADと診断しない理由としては、他の精神疾患の診断で十分(53.6%)、GADの確定診断は困難(50.0%)、GADと診断しても承認薬がない(14.5%)などが挙げられました。また、医師の85%がGADの治療に意義はあると回答した一方で、79.9%が治療に何らかの困難を感じており、その理由としては承認薬がないことや患者の疾患認知の低さ、周囲のサポートの不足などが挙げられています3)

うつ病患者におけるGAD併存割合(海外データ)1)
図1:うつ病患者におけるGAD併存割合(海外データ)1)
うつ病単独患者とうつ病•GAD併存患者のQOL(海外データ)1)
WHO-
QOL-BREF
スコア
うつ病単独
(n=189)
GAD併存
(n=478)
t値 p値
平均値±SD 平均値±SD
身体的QOL 38.64±10.35 36.54±12.32 2.23 0.026
心理的QOL 35.54±12.98 30.61±14.66 4.04 <0.001

WHOQOL-BREF:世界保健機関QOL尺度簡易版
SD:標準偏差

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対象:
DSM-IVによりうつ病と診断された患者667名
方法:
2013年4月~2015年4月に武漢精神衛生センターの外来診療科で募集した参加者に対して、病院不安・抑うつ尺度(HADS)を用いてスクリーニングを行い、HADSが8点以上の患者に2名の精神科専門医によるDSM-IVに基づいた面接が実施された。うつ病と診断された患者には、患者健康質問票、社会的支援評価尺度、ピッツバーグ睡眠品質指数、世界保健機関QOL尺度簡易版(WHOQOL-BREF)による評価を行った。統計解析はSPSSバージョン18.0を用いて実施し、統計学的有意水準はp<0.05(両側検定)に設定された。うつ病患者のGADの併存割合を記述するため、記述統計分析を行った。うつ病患者におけるうつ病単独群とGAD併存群のWHOQOL-BREFのスコアの差を検定するために、student’s t検定を用いた。これらのスコアは平均値±標準偏差(SD)として示された。
リミテーション:
QOLに悪影響を及ぼす全ての因子をデータ収集したわけではないため、交絡要因が存在する可能性がある。患者は他の精神疾患を併存することがあるが、本研究ではGADのみを調査対象とした。 横断的データでは、うつ病およびGADとQOLの関連性における因果関係を推論することは不可能であった。QOLは主観的な測定のため、患者のネガティブな感情がバイアスをかけた可能性がある。研究対象を精神科に限定したことは、本研究結果の一般化を制限している。
双極症患者におけるGAD併存割合(海外データ)2)
図2:双極症患者におけるGAD併存割合(海外データ)2)
対象:
PubMedで「双極症」「情動精神病」「躁うつ病」をキーワードとして、「全般不安症」「パニック症」「社会恐怖症」「強迫症」「不安症」の各疾患を検索し、2015年9月までに発表された双極症における不安症の有病率に関するデータを含む論文135本
方法:
まず、出版バイアスを分析した後、I2およびQ統計量を用いて異質性を評価した。次に、全てのタイプの双極症における不安症の診断に関するデータを対象に、ランダム効果モデルを用いたメタ分析を実施した。メタ回帰分析は、対象研究の異質性に影響を及ぼす可能性のある変数の影響を測定するために実施された。
リミテーション:
分析した研究の大半は人口ベースではなく、外来または入院患者を対象としたものである。このため、非回答率が報告されておらず一般化が低下している。入院患者の割合を用いて臨床的寛解をモデル化しようとしたが、本結果はエピソード内併存疾患については代表性を欠く可能性がある。大半の研究では「現在の」診断の定義が不明確であった。研究では主に平均発症年齢が報告されていたが、その多くは信頼性に欠ける可能性がある。学歴の詳細データは得られなかったため、「高校卒業以上」というカテゴリー変数を生成した。不安症の家族歴は大半の研究で報告されていなかったため、回帰分析の変数に含めることはできなかった。今回実施したメタ回帰分析は主に単変量解析であり、評価した様々な変数の相互作用は分析していない。
GADが疑われる患者をGADと診断しない主な理由3)
図3:GADが疑われる患者をGADと診断しない主な理由3)

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対象:
2022年11月に10名以上外来患者を診察した医師509名(精神科医493名、心療内科医16名)
方法:
2022年12月12日~16日にWebアンケートで、本調査のために作成された37問で構成される質問票を利用した。記述分析のみが実施され、データはカテゴリー変数については度数または割合、連続変数については要約統計量(平均値、標準偏差、中央値、範囲)として示された。
リミテーション:
インターネットおよびコンピューターを利用できる日本国内の医師のみを対象としているため選択バイアスが含まれる可能性がある。また、診断・投薬・周辺疾患等は自己申告のため、記憶によるバイアスや社会的に望ましい回答をしようとするバイアスが作用する可能性がある。

イフェクサー®SRの添付文書には、双極性障害の患者に関して以下のような記載があります。投与に際しては、十分に注意してください。
また、治療に際しては、「日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023」等もご参照ください。

9.
特定の背景を有する患者に関する注意
9.1
合併症・既往歴等のある患者
9.1.1
双極性障害患者
躁転、自殺企図があらわれることがある。[5.1、8.1-8.4、9.1.2、9.7.3、15.1.1参照]
  • 1)Zhou, Y. et al.:Sci Rep 18(7):40511, 2017
  • 2)Eser, HY. et al.:Front Psychiatry 27(9):229, 2018
  • 3)Nomoto, K. et al.:Neuropsychiatr Dis Treat 20:1001, 2024[COI:本論文の著者のうち3名は、ヴィアトリス社の社員である。]

GADと他の精神疾患の鑑別ポイント(DSM-5-TR)

GADの心配や不安は、6ヵ月以上にわたってコントロールの難しい状態が続き、患者が家庭や職場において物事を効率的に処理できなくなるなどの機能障害をもたらすことや、身体症状を伴うことがあるとされています1)
不安症群を含めた精神疾患は互いに高率に併存する傾向があります。心配や不安、恐怖を感じる、または回避される状況の種類、および関連する思考または信念の内容を詳細に検討することによって鑑別をしたり、併存を把握したりすることが可能であるとされています1)

GADと他の精神疾患における
「心配・不安」の特徴1)

うつ病(不安性の苦痛を伴う)
不安性の苦痛は、あくまでも、うつ病がベースにあった上での心配や焦燥で、期間の規定がない。GADはうつ病の有無にかかわらず、心配や不安が6ヵ月以上持続した場合に疑う。
パニック症
予期されないパニック発作を繰り返し経験し、また発作が起きるのではないかという予期不安が持続し、回避行動がみられる場合、パニック症と診断される(他の不安症群のパニック発作は予期される)。
社交不安症
他者の注視をあびる社交的場面への恐怖や、社会的状況で否定的な評価を受けることに焦点をおいた予期不安を感じる場合、社交不安症と診断される。GADの場合は、評価されるかどうかに関係なく心配をしている。
強迫症
1日1時間以上、強迫観念とそれに伴う繰り返しの強迫行為がある場合、強迫症と診断される。強迫観念は侵入的で、あってほしくない思考、衝動、イメージという形態をとる。
分離不安症
心配が愛着対象者との分離のみの場合、分離不安症と診断される。
  • 1)日本精神神経学会(日本語版用語監修),髙橋三郎・大野 裕(監訳):
    DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル.p.202, 207-208, 212, 221, 242-246, 256,医学書院,2023 より作成

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